20. June 2025
Five questions for Patricia Urquiola
―パトリシア・ウルキオラへの5つの質問― 世界的デザイナー、パトリシア・ウルキオラとDuravitとの初コラボレーションによって誕生したバスルームコレクション「Balcoon」。その開発背景、デザインプロセス、そして素材へのこだわりについて、ウルキオラが語ります。
• コレクションの核となるテラコッタカラー
• 素材と色彩の調和による美しい融合
• 多様な空間コンセプトに対応する高い汎用性
「Balcoon(バルクーン)」は、建築的なフォルムと明快なラインを融合させた、温かみと親しみやすさを備えたバスルームコレクションです。洗面ボウル、ファニチャー、バスタブ、水栓など、すべてのアイテムにパトリシア・ウルキオラの美学が息づいており、ミニマルでありながら力強いデザインアイデンティティとタイムレスなエレガンスが美しく調和しています。
1.「Balcoon」はどのように生まれたのですか?
Balcoonは、いわゆるハイエンド向けのプロジェクトではなく、中価格帯の製品について集中的にリサーチと検討を重ねた結果として生まれたものです。Duravitはこの価格帯に新たな可能性を見出し、際立った存在感を持つコレクションを目指して私に声をかけてくれました。シンプルかつスピーディに進行できるプロジェクトであると同時に、明快で率直なデザイン言語を持ち、中価格帯にも品格と個性をもたらすことのできるコレクションが求められていました。
2.どのようなアプローチでデザインに取り組まれたのですか?
デザインの出発点は、四角い台座とラウンド型の洗面ボウルという、非常に純粋な2つの幾何学形状でした。このシンプルな組み合わせが、Balcoonコレクション全体の基盤となっています。そこに、高さの違いや突起、素材やテクスチャーの重なりといった要素を加えることで、手頃な価格帯でありながら建築的な表現を実現し、視覚的な奥行きとリズムをもたらしました。
すべての要素はこの幾何学形状に基づきながらも、オブジェクトのボリュームは厳密にコントロールしつつ、プロポーションにはある程度の自由度を持たせています。これにより、均整のとれた造形美と空間の広がりを感じさせるデザインが生まれています。
3.バスルームに色を取り入れていらっしゃいますね。
はい、これはホワイトやブラックといった従来のミニマルな美学から、あえて意識的に距離を置いた試みです。私たちは「クレイ(土)」という素材をキャンバスに見立て、サニタリーアイテムに奥行きと豊かさを与えたいと考えました。その中核となるのが、伝統的なクラフトマンシップに着想を得た新しいセラミックカラー「Clay Terra Matt(クレイ・テラ・マット)」です。このアーシーなテラコッタカラーは、Balcoonコレクション全体の世界観をかたちづくる中心的な存在です。ホワイト、アースブラウン、アンスラサイトといった自然からインスピレーションを得たファニチャーのカラーパレットも、やわらかく洗練された調和をもたらし、バスルーム空間における“色”の可能性を広げています。
4.Balcoonは非常に建築的なプロジェクトであり、ファニチャーは他のデザイン要素との相互作用も意識されていますね。
Balcoonのファニチャーは、オープンとクローズの要素を組み合わせられるモジュール式構造となっており、さまざまな空間コンセプトやデザインアプローチに柔軟に対応できる高い汎用性を備えています。
一般的に、中価格帯の洗面キャビネットはシンプルな直方体が主流ですが、Balcoonはそのイメージを打ち破る存在です。そのデザイン言語と調和のとれたカラーリングは、バスルームだけでなく、リビングや他の生活空間にも心地よく調和するデザインとなっています。
5.ご自身の仕事の中で、何に最も魅力を感じていますか?
新しいプロジェクトに取り組むとき、私はまず、人々の暮らしや習慣の中に深く入り込むことから始めます。それこそがデザインの本質であり、この仕事に惹かれ続けている理由でもあります。私は、既存のものを組み合わせたり、変化させたりしながら、より良いものへと進化させる「ハイブリッド」な発想を大切にしています。従来のものを再構築し、新たな視点で捉えるには、ある種の勇気が必要ですが、それこそがデザインの面白さだと感じています。また、素材にも深い関心があり、常にその可能性を問い直しています。たとえば近年では、3Dプリンティングにより素材の無駄を最小限に抑えることができるようになりました。でも私は、セラミックのような古くからある伝統的な素材にも変わらぬ魅力を感じています。
完璧なラインを追い求めることよりも、デザインをひとつの“サイクル=循環”として捉えるとき、自分自身が最も自然でいられるのです。時間は素材に作用し、私自身にも影響を与えます。そして私は、その“時間”とともに創作を続けているのです。

